Zoho CRM では、AI機能「Zia(ジア)」への機能追加や営業業務の全般を改善する機能強化など、SFA関連の新機能が多数行われました。本記事では、2023年にかけてZoho CRM に実装された新機能についてご紹介します。
セールスイネーブルメント
営業チームが効率的に業務を行えるようにさまざまなセールスイネーブルメントの機能が追加されました。以下でご紹介するのは、日々の活動を支え、業務パフォーマンスの向上にお役立ていただける機能です。
メール機能がスレッド表示に対応
Zoho CRM は、メールのスレッド表示に対応しました。これまでも複数のやりとりメールをZoho CRM に自動的に紐づけて統合的に管理することができましたが、一つひとつのメールが個別に記録されていました。今回、このメールにスレッド表示の機能が実装されたことで、一連のメールやりとりをスムーズに確認できるようになりました。
集計項目
集計項目は、CRMに蓄積されたデータの合計値や平均値などを項目として各タブの項目として設置できる機能です。例えば、未完了の商談の件数、未対応のタスクの合計、作成された見積書の合計などを自動で集計して項目として表示します。これにより例えば、取引先タブで現在進行中の商談の合計を表示させるといった利用も可能になり、画面遷移をしなくても参照すべき全体の情報を確認することが可能になります。
サブフォームでユーザーのルックアップが可能に
サブフォームは各タブのデータに表(テーブル)を設置できる機能であり、例えば商談タブで商談が行われている商品の追加オプション商品を登録するといった利用が可能です。Zoho CRM では、サブフォームのリリース以来、利用できる項目を広げてきましたが、今回のアップデートにより「ユーザー」項目を追加できるようになりました。これにより、例えば商談タブや取引先タブで対応履歴(初回コール者、デモの対応者、契約の手配者など)を記録するといった利用でも役立ちます。
メールテンプレートでサブフォームが利用可能に
サブフォームをメールテンプレートでも活用できるようにしました。サブフォームを表(テーブル)形式でメールテンプレートに挿入することはもちろん、メールテンプレート用にサブフォームの行や列を追加したり、一部を削除したメールテンプレートを作成することもできます。
請求書が商談ルックアップ項目に対応
これまでもルックアップ項目を利用して請求書を特定の口座や連絡先に関連付けることができましたが、さらに今回のアップデートで請求書を直接、商談に関連付けることができるようになりました。見積書を請求書に変換する際にも、この商談との関連付けを維持しておくことが可能になります。
これは、請求書を確実に商談に関連付けたいと考えられていた方やカスタムルックアップ項目を利用して請求書を特定の商談に手動で関連付け利用されていた方にぜひ、ご活用いただきたい機能です。
ポータル機能をさらに強化
ポータルは、顧客、パートナー、取引先にCRMのデータについて制御されたアクセスを提供する機能です。
今回、Zoho CRM のポータル機能に以下のアップデートが実施されました。
ポータルユーザーのメールアドレス変更
既存のポータルユーザーがメールアドレスを変更した場合(このメールアドレスがポータルアクセスに関連している場合)、これらのユーザーのメールアドレスを簡単に更新できるようになりました。これにより、新しいメールアドレスを使用してポータルにアクセスできるようになります。
ポータル招待のテンプレートのカスタマイズ
ポータルの招待状やメールアドレス確認のメールを自由にカスタマイズできるようになりました。件名、メール本文、送信元アドレスの内容を変更できるだけでなく、差し込み項目や書式設定を使用したカスタマイズにも対応し、また複数の言語で保存することができるようになりました。
翻訳機能で翻訳できる対象が増えました
Zoho CRM の翻訳機能で、項目やピックリスト項目の値ラベルも翻訳ができるようになりました。また、ラベルの訳語をZoho CRMにインポートできるようになりました。
これまで、項目や選択項目の値に翻訳を設定することができましたが加えて、以下の値も翻訳できるようになりました
- タブ名
- サブフォームのラベル
- 関連リストのラベル
タブ間共通で利用できる共通選択リスト
共通選択リストを作成して、異なるタブで利用できるようになりました。選択リストの値をタブごとに選択することは手間がかかり、またタブごとに値がずれてしまうことでレポートにも影響するケースがありました。この共通選択リストはそうしたこれまでの課題を解消する便利な機能です。
トランザクションSMS機能が登場(インドのみで利用可能)
Zoho CRM から支払い処理などトランザクションのSMS通知を送信できるようになりました。
差し込み項目
送信されるメッセージのテンプレートには、差し込み項目を利用することができます。
自動SMS送信
ワークフロー、ブループリント、コマンドセンターのジャーニーでSMSメッセージが自動送信されるようトリガーすることができます。
途切れることのないコミュニケーション -
SMSメッセージ機能の送信で利用するクレジットについて、「最低クレジット残高」を指定し、自動で再チャージされるように設定できます。これにより、SMS通知がクレジット不足で配信が停止されることを防止できます。
※ この機能は現在インドでのみ利用可能で、段階的に対象国を広げています
販売管理・分析
数字に基づく管理や方針判断は、ビジネスの成長をより確実にします。
Zoho CRM には新たに搭載されたレポートや予測機能の一部を以下にてご紹介します。
予測データの保存期間を5年に延長
予測機能は、高い目標を設定してそれを実現可能にするため日々活動するのにとても役立つ機能です。
予測機能は、現在の活動状況や受注傾向から将来の販売成績を予想する機能です。高い目標を設定し、それを日々チームが一丸となって実現可能にしていくのに役立つ機能ですが、予測データを2年分しか保存できませんでした(現在の年と1年先のデータのみ)。今回のアップデートで、最大5年分の予測を保存できるようになり、これにより過去のパフォーマンス履歴を表示できるようになります。
※ 会計年度の開始時期を変更すると、保存された過去の予測データは削除されますので、ご注意ください。
レポートの検索・ハイライト対応
特定のテキストと一致するレポートの名前を検索して、Control + F (Mac の場合、Command + F)のようにハイライト表示することができるようになりました。これにより、膨大に作成されたレポートからすぐにお探しのものを見つけることが可能になります。
Webフォーム分析がURL基準に対応
サイトに設置したWeb フォームを最適化してより多くのビジネス機会を創出するWebフォーム分析がURL基準に対応しました。これにより、ウェブフォームのURLに基づくパフォーマンス分析ができるようになりました。この機能は、同じWebフォームを複数のページで使用している場合に特に役立ちます。URLごとに結果を追跡し、ドメイン内のすべてのURLに対して詳細なパフォーマンスデータを提供します。
詳細なステージ変遷図
「詳細なステージ変遷図」がアナリティクスタブで利用できるグラフとして追加されました。このグラフは、売り上げを獲得のために行うさまざまなステップ(ステージ)を、階段に分けて表示します。例えば、商談ステージで、どれだけの人が商談を開始したのか、どれだけの人が進んでいったか、最終的にどれだけの人が受注まで繋がったのかなどが分かります。これにより、一目でどのステップがどれだけ重要か、またどのステップで問題があるのか、どこを改善すれば売り上げが伸びるのかなどがわかりやすくなります。
予測AIの強化
AIツール「Zia(ジア)」を利用して、Zoho CRM に蓄積された大量のデータから傾向を算出する機械学習に基づく予測を行います。今回このZia に新機能・機能アップデートが実装されました。詳細は以下を参照ください。
レコメンド分析を強化
Zia は、機会学習によってこれまで蓄積された記録や類似データをもとに「最適な連絡時間帯」「商品のレコメンド」などを提案するレコメンド機能を提供しています。このレコメンドに分析機能が新たに追加されました。
有効なレコメンド数、レコメンドが受注などのコンバージョンに与える影響、特定の商品・サービスのレコメンド傾向など、さまざまな側面で詳細な分析データを取得できるようになりました。
Zia 画像認証
Zia には、画像から特定の物体を検出する画像認証の機能が搭載されています。今回のアップデートにより、Zia をトレーニングし、特定の画像が検出された場合にのみZoho CRM にアップロードされた画像を検証できるようになりました。
1. 不動産
不動産業のA社は、海外の高級別荘でプール付きの物件を抽出できるようにしたいと考えています。そこで、プールの画像を検出トレーニングとして複数アップロードしました。Zia は学習した画像認証のアルゴリズムに基づき、プールが映っている物件の写真のみを「プール付き」と検出し、それ以外を無効として回答します。
2. 自動車販売
自動車販売業のB社は、欠陥のある車の画像をデータから排除したいと考えています。そのため、へこみや傷の写真をトレーニングデータとして追加します。Zia は、欠陥のある画像を判別し、無効として回答するようになりました。
最適な連絡時間帯の分析
Zia は、これまでのメールや電話への応答パターンを分析し、連絡に最適な時間帯を教えてくれます。今回のアップデートで、この最適な連絡時間帯を詳細に分析する機能が実装されました。これにより、最適な連絡時間帯の提案サマリー、推奨されるタイミングで通話やメールを行っているユーザー数、それが通話やメールの成功率に与える影響などを表示します。
Zia 通知のZoho Cliq、Slack、メール対応
Zoho CRM の設定から、Ziaの通知をメール、Zoho Cliq、さらにはSlackなど他アプリケーションにプッシュすることができるようになりました。
※ Slack 連携は2023年現在、アメリカデータセンターのアカウントをご利用中のユーザーのみご利用いただけます。
類似レコメンド
興味、課題、要件など、以前に対応した他の顧客との類似点を持つデータを特定しレコメンドできるようになりました。現在進行中の商談はもちろん、キャンペーンでも利用できます。キャンペーンでは例えば、過去の類似する展示会の情報をレコメンドの枠に表示してくれます。
次の最適な顧客対応を提案
「製品比較・検討」のフェーズで導入事例や社内向け説明資料など、検討を通過しやすくする資料を送付するなど、顧客にどのように対応するかは受注・失注に大きく影響を与えます。Zoho CRM に新たに追加された「次の最適な顧客対応」機能はそうした次にとるべきアクションを提示してくれます。なお、この機能は20ユーザー以上の組織でのみご利用いただけます。
Zoho CRM は解約も予想
Zoho CRM に「解約」を予測する機能が追加されました。Ziaは顧客のすべての記録、相互作用、購買パターンなどを分析し、それぞれの顧客にスコアを付与します。スコアが高いほど、顧客が離れる可能性が高くなります。サブスクリプションビジネスの場合、特定のサブスクリプションに関連する解約スコアもつけることができます。解約リスクが高いと判定された顧客に対してフォローアップやキャンペーンなどを実施して解約を防止することも可能です。
指標報告スライドショー(英語のみ)
Ziaは、CRM データから収集されたデータを分析し、独自の洞察や行動分析を生成し、最も重要な結果をプレゼンテーション形式でまとめることができるようになりました。
継続的なネガティブ感情の通知(英語のみ)
Ziaのメール感情分析センチメントは、顧客からのすべての受信メールの内容を分析し、その内容が伝える感情の種類に応じてタグ付け(満足、不満、中立など)します。今回のアップデートにより、顧客が連続してネガティブな感情を表すメールを送信した場合、継続的なネガティブ感情として通知を受けるようにすることができます。
受信メールの意図分析をカスタムできるように(英語のみ)
「相談」、「問い合わせ」、「依頼」などキーワードが付いたメールを判別してタグ付けを行うことができます。このタグ付けにカスタムのキーワードが含まれる場合という条件を追加できるようになりました。
※この機能は、英語のメールにのみ利用することができます。
通話記録の文字起こし(英語のみ)
Zia に自動文字起こしの機能が追加されました。この機能では、「担当者」と「顧客」の音声を自動で識別し、文字起こしに反映させることができます。
※ この機能は、英語の通話でのみ利用できます。
データエンリッチメントの履歴と使用状況レポート(英語のみ)
Zoho CRM に登録されたデータを拡充するデータエンリッチメントは、名前、電話番号、またはメールアドレスなど、既存のデータにすでにある情報を基に、Ziaがインターネット上で公開されている情報を取得して、CRMに記録する機能です。この機能を活用して、業種や従業員数、社員数などを取得してCRMに登録することができましたが、エンリッチメントによって取得されたデータと手動で入力されたデータの判別がこれまでできませんでした。
今回のアップデートによって、Zia によるデータエンリッチメントの履歴を記録してそのタイムラインを提供できるようになりました。さらに、組織でエンリッチメント機能がどう使用されているかも分析できるようになりました。
データエンリッチメントの分析では以下をご確認いただけます:
- 月間限度量と月間平均消費量
- タブごとに行われたエンリッチメントの総数(円グラフ)
- これまでのエンリッチメントの採用傾向(トレンドチャート)
- タブごとに消費したエンリッチメント数(表)
Ask Zia によくリクエストすることをスケジュール化できるように(英語のみ)
Zia は、業界初の営業担当者向け対話型AIであり、ユーザーはチャットや音声を通じてZia に質問するだけで、データの更新、メモの追加、タスクの作成、レポートの作成などを行うことができます。今回、特定の時刻や頻度を指定して普段よく利用するZia へのリクエストを自動で送信することができるようになりました。
例えば、毎日の終わりに活動やメモの内容を基にした「本日の日報」を作成するようにリクエストしたり、毎月受注件数と金額をZia に尋ねるように設定することができます。
CRM管理者向けの機能アップデート
CRMの社内活用を支えるCRM管理者からのリクエストに応じて、さまざまな管理者向け機能にアップデートが実施されました。
Zoho CRM サンドボックス(テスト環境)で利用できる機能をさらに追加
複雑であったり、また大規模なZoho CRM の更新を展開する際には、本番アカウントに適用する前に、サンドボックス環境(テスト環境)でテストすることを推奨しています。Zoho CRM ではサンドボックスでテストできる機能の対応範囲を拡張することに取り組んできましたが、今回クライアントスクリプト、静的リソース、アクセスドメイン制限、ウィザード、項目依存機能などにも対応しました。
使いやすさが飛躍したCRM管理者向けツール
CRM管理者は日々、新しいビューの設定、カスタマイズ、自動化、アクセス設定などを行い、CRMが最良の状態を保つ役割を担います。設定することも重要ですが利用しなくなった設定を削除することはさらに大きな課題となります。経時的に、CRMには古くなったワークフロー、新しい集計項目を呼び出していないテンプレート、無効のレポートなどが蓄積されていく可能性があります。
Zoho CRM の管理者ツールは、使われなくなったテンプレート、カスタムビュー、ワークフロールール、レポートを削除し、各機能の削除履歴を追跡するための中央集約されたスペースを提供します。
データロックで記録を守る
CRMには、顧客とはじめて接触してから商談を開始し、取引が繰り返し行われていくその軌跡が記録されます。その過程では、契約や財務の観点などさまざまな理由で特定の記録をそのまま保持する必要性があることがあります。
Zoho CRM では、データのロック機能を使用して、記録全体をロックすることができます。このロックは特定のステージに到達したデータに自動で適用することはもちろん、手動でも適用することができます。また、担当者に応じてロックするタイミングを定義して自動でZoho CRM に処理を実施させることも可能です。
最後に、AI活用や機械学習にご興味をお持ちいただいている方へご案内です。
機会学習ソリューションを構築するノーコード構築プラットフォームが登場
機会学習(マシンラーニング)と自然言語処理は、人工知能(AI)の重要なポイントです。Zohoのインテリジェント・アシスタント「Zia(ジア)」が、Zoho CRM をはじめとした幅広いアプリケーションで業務の向上を支援しています。 AI活用をご希望されるユーザー様は独自のニーズを抱えられていることが多く、クラウド型CRMをはじめとしたクラウドツールが提供する、AI機能では満たされません。 この課題に対応するため、私たちはQuickMLをリリースします。QuickMLはコード不要の機械学習プラットフォームで、アプリケーション開発プラットフォーム 「Catalyst(カタリスト)を利用して、企業それぞれのニーズに対応したソリューションを提供するサービスです。 QuickMLでは、Zoho CRM、Zoho Bigin、Zoho Creator、Zoho RecruitなどのZoho サービスや外部サービスとデータコネクタを使って簡単に接続し、データをインポートすることができます。その後、データをプロファイリングして構造と接続を理解し、データセットにさまざまなデータ操作とMLアルゴリズムを適用するパイプラインを構築して、カスタムAIソリューションとしてビジネスに関連する洞察を導き出すことができます。コードを一行も書くことなく、ビジネスに必要な洞察を与えるMLソリューションを構築できます。 QuickMLはまだ、すべてのユーザーさまに提供されていません。QuickMLの早期アクセスのリクエストはこちらよりお送りください
最後までZoho CRM の新機能をご確認いただき、ありがとうございます!
Zoho CRM では、セールスやマーケティングを中心に業務効率や売り上げのアップに貢献する豊富な機能が備えられています。今後も、Zoho CRM はさらなる改良・改善に努めて参ります。
まだZoho CRM をご利用されていない方はぜひ、無料トライアルをお試しください。
当社プロダクトチームは、さらに多くのエキサイティングでパワフルな機能の開発に取り組んでいます。